iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を出して運用し、原則60歳以降に受け取る年金の制度です。この記事では、始める前に確かめること、手数料、申し込みの流れを、厚生労働省とiDeCo公式サイト(国民年金基金連合会)の資料にもとづいて説明します。2024年12月と2026年12月の改正も反映しています。
始める前に確かめる3つのこと
1. 自分の区分と掛金の上限
掛金は月5,000円から、1,000円単位で決められます。上限は、国民年金の区分と勤務先の企業年金で決まります。
| 区分 | 現在(2024年12月から) | 2026年12月(2027年1月引き落とし分)から |
|---|---|---|
| 自営業者・フリーランス・学生など(第1号) | 月6.8万円(国民年金基金などと合計) | 月7.5万円(国民年金基金などと合計) |
| 企業年金がない会社員など(第2号) | 月2.3万円 | 月6.2万円 |
| 企業年金がある会社員(第2号) | 月2.0万円 | 月6.2万円(企業年金と合計) |
| 国家公務員・地方公務員(第2号) | 月2.0万円 | 月5.4万円 |
| 第2号被保険者に扶養されている配偶者(第3号) | 月2.3万円 | 月2.3万円 |
公務員の上限は、2024年12月に月1.2万円から2万円に上がりました。 さらに2026年12月からは月5.4万円になります。これは、上限の6.2万円から共済掛金相当額の8,000円を引いた額です。
企業年金がある人は、今は企業型DCの事業主掛金などと合わせて月5.5万円を超えられません。公務員の場合は、共済掛金相当額と合わせて月5.5万円までです。そのため2万円まで出せない人もいます。自分の企業年金の掛金相当額は、勤務先に確かめてください。
2. 原則60歳まで引き出せないこと
iDeCoのお金は、原則60歳まで引き出せません。受け取りは、原則60歳から75歳までの間で選べます。ただし60歳から受け取るには、60歳までの通算加入者等期間が10年以上必要です。
掛金を出すのを止めることは、手続きをすればいつでもできます。止めても、それまでのお金は引き出せず、運用を続けます(運用指図者になります)。掛金額は年1回見直せます。
3. 税金がどれだけ減るか
掛金は全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になり、所得税と住民税が減ります。ただし、所得税・住民税がかかっていない人には、この利点がありません。
目安の計算式は「年間の掛金 ×(所得税率 × 1.021 + 住民税10%)」です。1.021は復興特別所得税(所得税額の2.1%)の分です。所得税率10%の人の場合は次のとおりです(税率の区分が変わらないと仮定)。
| 掛金(月) | 1年で減る税金の目安 |
|---|---|
| 5,000円 | 12,126円 |
| 2万円 | 48,504円 |
税率ごとの表は「新NISAとiDeCoの違いと使い分け方」に載せています。
手数料
iDeCoには、どの金融機関で始めてもかかる手数料と、金融機関ごとに違う手数料があります。
国民年金基金連合会の手数料(全員共通)
| 種類 | 金額(税込) |
|---|---|
| 加入・移換時手数料(初回1回のみ) | 2,829円 |
| 掛金を納付するたびの手数料 | 105円 |
| 還付手数料(その都度) | 1,048円 |
国民年金基金連合会は、加入中の手数料の見直しを予定しています。 時期と金額は、iDeCo公式サイトや加入先の金融機関の最新の案内で確かめてください。
事務委託先金融機関(信託銀行)と運営管理機関の手数料
このほか、資産を管理する事務委託先金融機関の手数料と、申し込む金融機関(運営管理機関)の手数料がかかります。金額は機関によって違います。たとえば三菱UFJ銀行の手数料表(2026年4月1日現在)では、事務委託先金融機関の手数料が月66円、運営管理機関の手数料が0円です。
毎月かかる手数料の合計(例)
国民年金基金連合会の手数料に、事務委託先金融機関の月66円を足し、運営管理機関の手数料を0円とした場合の計算です。
| 時期 | 月 | 年 |
|---|---|---|
| 現在(2026年10月) | 171円 | 2,052円 |
掛金が少ないほど、手数料の割合は大きくなります。月171円は、掛金が月5,000円なら3.42%、月2万円なら0.85%に当たります。運営管理機関の手数料がかかる金融機関では、さらに増えます。上で書いた手数料の見直しがあれば、この金額も変わります。
投資信託を選ぶと、ほかに信託報酬などもかかります。信託報酬の差の影響は「投資信託の選び方とコストの見方」で計算しています。
金融機関の選び方
申し込みは、原則として、iDeCo公式サイトの「運営管理機関一覧」にある金融機関で受け付けています。比べるのは次の2点です。
- 運営管理機関の手数料: 0円の機関もあれば、かかる機関もあります。
- 選べる運用商品: 定期預金、保険商品、投資信託などがあります。元本確保型の商品もありますが、投資信託などは元本を下回ることがあります。投資信託を選ぶなら、信託報酬も比べます。
申し込みの流れ
- 情報を集める: 運営管理機関のWebサイトやコールセンターで、手数料と商品を確かめます。
- 運営管理機関を選び、申込書類を入手する: 一部の金融機関では、オンラインで手続きできます。
- 書類に記入して提出する: 必要書類とともに金融機関に提出します。
- 掛金の引き落としと運用を始める: 加入が決まったら、選んだ商品で運用が始まります。
会社員・公務員の「事業主証明書」は廃止
以前は、会社員や公務員が申し込むとき、勤務先に「事業主証明書」を書いてもらう必要がありました。厚生労働省によると、この事業主証明書の発行と、年1回の現況確認は2024年12月から廃止されました。国民年金基金連合会が、毎月、企業年金の加入状況を確認できるようになったためです。古い解説には「勤務先に証明書を頼む」と書かれていることがあるので注意してください。
年末調整・確定申告
掛金を自分の口座から納める(個人払込)場合は、国民年金基金連合会から「小規模企業共済等掛金払込証明書」が届きます。これを年末調整や確定申告で使います。給与から天引きする(事業主払込)場合は、勤務先が給与計算で控除するので、証明書は発行されません。
2026年12月の上限引き上げで掛金を増やすには
上限が上がっても、掛金を増やすには掛金額の変更の手続きが必要です。厚生労働省のチラシでは、2026年12月分(2027年1月口座引き落とし分)からの変更の受付は、2026年9月頃からの予定とされていました。手続きの方法は、加入している金融機関で確かめてください。
また2026年12月からは、一定の要件を満たせば60歳以上70歳未満の人も加入できるようになります。
将来いくらになるかは複利計算で、老後に必要な金額は老後資金の計算で試せます。
まとめ
- 上限は区分で違います。公務員は2024年12月から月2万円、2026年12月から月5.4万円です。
- 国民年金基金連合会の手数料は、加入時2,829円、納付のたび105円です(2026年10月時点。見直しが予定されています)。
- 会社員・公務員の事業主証明書は2024年12月に廃止されました。