パートやアルバイトで働く人の「年収の壁」は、2025年から2026年にかけて大きく変わりました。2026年10月には、勤め先の社会保険に入る基準から「月額8.8万円(いわゆる106万円)」がなくなりました。この記事では、2026年10月時点の社会保険のしくみと、令和8年分の所得税の基準をまとめます。
会社員の社会保険料のしくみ
会社で社会保険に入ると、次の保険料が給与から引かれます。
| 保険料 | 令和8年度の料率(会社と本人の合計) | 本人の負担 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ 東京支部) | 9.85% | 4.925% |
| 子ども・子育て支援金(2026年4月分から) | 0.23% | 0.115% |
| 介護保険(40〜64歳) | 1.62% | 0.81% |
| 厚生年金 | 18.3% | 9.15% |
| 雇用保険(一般の事業) | 1.35% | 0.5% |
健康保険の料率は加入先と都道府県で違います。協会けんぽの令和8年度の料率は2026年3月分から使われ、たとえば大阪府は10.13%です。
健康保険と厚生年金は、給与を区切った「標準報酬月額」に料率を掛けて計算します。標準報酬月額は毎年4〜6月の報酬の平均で決め直され、9月から翌年8月まで使われます。雇用保険料は、その月の賃金に料率を掛けて計算します。
月11万円で働く場合の例
協会けんぽ東京支部、40歳未満、月給11万円(標準報酬月額11万円)で、勤め先の社会保険に入った場合です。計算のしくみは「手取りの計算方法と給与明細の読み方」で詳しく説明しています。
| 項目 | 本人負担(月額) |
|---|---|
| 健康保険料(子ども・子育て支援金を含む) | 5,544円 |
| 厚生年金保険料 | 10,065円 |
| 雇用保険料 | 550円 |
| 合計 | 16,159円 |
月の合計は給与の約14.7%で、年額にすると193,908円です。
勤め先の社会保険に入る基準(2026年10月から)
パートなどの短時間労働者は、次の要件を満たすと勤め先の社会保険(健康保険・厚生年金)に入ります。
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 勤め先が従業員数51人以上の企業
- 学生ではない
これまでは「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件もありました。年額にすると約105.6万円で、「106万円の壁」と呼ばれていたものです。この賃金要件は2026年10月1日に撤廃されました。 いまは、上の要件を満たせば、原則として給与の額にかかわらず加入します(最低賃金の減額特例を受けている人などの例外があります)。
従業員数の要件も、段階的に縮小されることが決まっています。
| 時期 | 新たに対象になる企業 |
|---|---|
| 2027年10月から | 従業員36〜50人 |
| 2029年10月から | 従業員21〜35人 |
| 2032年10月から | 従業員11〜20人 |
| 2035年10月から | 従業員1〜10人 |
施行を待たずに、労使の合意で加入することもできます。
家族の扶養に入れる基準(130万円)
会社員の家族は、収入が一定より少なければ、その会社員の健康保険の「被扶養者」になれます。被扶養者は自分で保険料を払いません。配偶者が20歳以上60歳未満で被扶養者になる場合は、原則として国民年金の第3号被保険者にもなります。
被扶養者になれる年間収入の基準は次のとおりです。
| 被扶養者になる人 | 年間収入の基準 |
|---|---|
| 原則 | 130万円未満 |
| 19歳以上23歳未満(配偶者を除く) | 150万円未満 |
| 60歳以上、または障害者 | 180万円未満 |
19歳以上23歳未満の150万円は、扶養認定日が2025年10月1日以降の場合の基準です。年齢は、扶養認定日が属する年の12月31日時点で判定します。
同居している場合は、収入が扶養する人の収入の半分未満であることも必要です。別居している場合は、収入が仕送りの額より少ないことが必要です。
2026年4月からの判定のしかた
2026年4月1日から、給与収入だけの人は、労働条件通知書などの労働契約の内容から見込まれる年間収入で判定できるようになりました。契約上の賃金(諸手当と賞与を含む)から見込まれる年間収入が130万円未満で、ほかの収入が見込まれなければ、被扶養者として扱われます。結果として臨時の収入があっても、社会通念上妥当な範囲なら、扶養の取り扱いは変えなくてよいとされています。
扶養を外れたらどうなるか
130万円以上になって扶養を外れたとき、勤め先の社会保険の要件を満たしていれば、その社会保険に入ります。満たしていなければ、国民健康保険に入り、20歳以上60歳未満なら国民年金の第1号被保険者として保険料を自分で納めます。
国民年金の保険料は、令和8年度は月17,920円(年215,040円)です。国民健康保険料は自治体と所得によって違います。
社会保険に入ると受けられるもの
勤め先の健康保険に入ると、病気やけがで仕事を休んで給与が出ないときに傷病手当金を受けられます。協会けんぽでは、1日あたり「支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 2/3」で、同じ病気やけがについて通算1年6か月までです。被扶養者には支給されません。
厚生年金に入ると、老齢基礎年金に上乗せして、65歳から老齢厚生年金を受け取れます。年金額は、厚生年金に加入していたときの報酬額や加入期間などで決まります。
税金の基準(令和8年分)
社会保険の基準とは別に、税金にも収入の基準があります。令和8年分(2026年1〜12月の収入)では、基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、基準の額が変わりました。給与収入だけの場合の目安は次のとおりです。
| 何が変わるか | 給与収入の目安 |
|---|---|
| 本人に所得税がかかり始める | 178万円超 |
| 扶養する人が配偶者控除・扶養控除を受けられる | 136万円以下 |
| 配偶者特別控除が満額(38万円)でなくなる | 169万円超 |
| 配偶者特別控除がなくなる | 207万円超 |
| 19〜22歳の子などが特定親族特別控除の対象から外れる | 197万円超 |
所得税の178万円は、給与所得控除74万円と基礎控除104万円を足した額です。社会保険料を払っていれば、社会保険料控除の分だけさらに高くなります。
配偶者控除と配偶者特別控除は、扶養する人の合計所得金額が1,000万円を超えると受けられません。控除の額は、扶養する人の所得によっても変わります(表の38万円は合計所得900万円以下の場合)。
配偶者特別控除や特定親族特別控除の額の表は「年末調整の控除と申告書の書き方」にまとめています。
住民税の基礎控除は最高43万円のままです。そのため、住民税は所得税より低い収入からかかります。
まとめ
- 2026年10月から、勤め先の社会保険は「週20時間以上」などの要件で決まり、月8.8万円の賃金要件はなくなりました。
- 家族の扶養に入れる基準は130万円未満(19〜22歳は150万円未満)です。
- 令和8年分の所得税は、給与だけなら178万円までかかりません。配偶者控除などの基準は136万円です。