給与の額面から手取りを出すには、社会保険料、所得税、住民税の3つを引きます。この記事では、2026年(令和8年分)のルールと、令和8年度の保険料率で、それぞれの計算のしかたを順に説明します。最後に、前提をそろえて計算した年収別の手取りの表を載せます。
給与から引かれるもの
給与明細の「控除」の欄に並ぶのは、おおむね次の項目です。
| 項目 | 何の基準で決まるか |
|---|---|
| 健康保険料(子ども・子育て支援金を含む) | 標準報酬月額 × 料率 ÷ 2 |
| 介護保険料(40〜64歳) | 標準報酬月額 × 料率 ÷ 2 |
| 厚生年金保険料 | 標準報酬月額 × 18.3% ÷ 2 |
| 雇用保険料 | その月の賃金 × 本人負担の料率 |
| 所得税 | その年の所得(毎月は概算で引き、年末調整で精算) |
| 住民税 | 前年の所得 |
健康保険と厚生年金の保険料は、会社と本人が半分ずつ負担します。明細に載るのは本人の負担分です。
社会保険料の計算
標準報酬月額で計算する
健康保険と厚生年金は、実際の給与ではなく「標準報酬月額」に料率を掛けて計算します。標準報酬月額は、給与の額を区切った等級です。毎年4〜6月の報酬の平均で決め直され、その年の9月から翌年8月まで使われます。
厚生年金の標準報酬月額は、8万8千円から65万円までの32等級です。65万円が上限なので、月給がそれより高くても保険料は増えません。この上限は、2027年9月から68万円、2028年9月から71万円、2029年9月から75万円に段階的に引き上げられることが決まっています。
令和8年度の料率
| 保険料 | 料率(会社と本人の合計) | 本人の負担 |
|---|---|---|
| 健康保険(協会けんぽ 東京支部) | 9.85% | 4.925% |
| 子ども・子育て支援金 | 0.23% | 0.115% |
| 介護保険(40〜64歳) | 1.62% | 0.81% |
| 厚生年金 | 18.3% | 9.15% |
| 雇用保険(一般の事業) | 1.35% | 0.5% |
健康保険の料率は、加入先によって違います。協会けんぽは都道府県ごとに料率が決まっていて、令和8年度は東京都が9.85%、大阪府が10.13%、新潟県が9.21%などです。協会けんぽの令和8年度の平均保険料率は9.9%です。会社の健康保険組合に入っている人は、組合の料率を確認してください。協会けんぽの令和8年度の料率は、2026年3月分(4月納付分)から使われています。
子ども・子育て支援金は、2026年4月分(5月納付分)から健康保険料と合わせて徴収されています。協会けんぽの率は全国一律で0.23%です。
雇用保険料率は、2026年4月から2027年3月までの率です。一般の事業では本人負担が1,000分の5、会社負担が1,000分の8.5です。
月給30万円の例
協会けんぽ東京支部で、40歳未満、月給30万円(標準報酬月額30万円)の場合です。
| 項目 | 本人負担(月額) |
|---|---|
| 健康保険料(子ども・子育て支援金を含む) | 15,120円 |
| 厚生年金保険料 | 27,450円 |
| 雇用保険料 | 1,500円 |
| 合計 | 44,070円 |
40歳以上なら、介護保険料が加わり、健康保険料の欄は17,550円(2,430円増)になります。
所得税の計算(令和8年分)
所得税は、次の順で計算します。
- 給与の収入 − 給与所得控除 = 給与所得
- 給与所得 − 所得控除(社会保険料控除、基礎控除など)= 課税所得
- 課税所得 × 税率 − 控除額 = 所得税
- 所得税 × 2.1% = 復興特別所得税(合わせて納める)
令和8年分の改正
令和8年分から、基礎控除と給与所得控除が引き上げられました。改正は2026年12月1日に施行され、令和8年分の所得税に適用されます。
給与所得控除は、給与の収入が220万円までなら74万円です。それを超えると、収入に応じて次のように増えます。
| 給与の収入 | 給与所得控除 |
|---|---|
| 220万円まで | 74万円 |
| 220万円超 360万円まで | 収入 × 30% + 8万円 |
| 360万円超 660万円まで | 収入 × 20% + 44万円 |
| 660万円超 850万円まで | 収入 × 10% + 110万円 |
| 850万円超 | 195万円 |
基礎控除は、合計所得金額によって変わります(令和8年分・令和9年分)。
| 合計所得金額 | 基礎控除 |
|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 |
| 489万円超 655万円以下 | 67万円 |
| 655万円超 2,350万円以下 | 62万円 |
給与だけの人なら、給与の収入が178万円(給与所得控除74万円 + 基礎控除104万円)までは所得税がかかりません。
毎月の給与から引かれる所得税は、改正前の税額表で計算されています。2026年12月の年末調整で、改正後の基礎控除などを使って1年分の税額を計算し直し、差額が精算されます。
累進課税は「課税所得」に段階的にかかる
所得税の税率は5%から45%までの7段階です。
| 課税所得 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円未満 | 5% | 0円 |
| 195万円以上 330万円未満 | 10% | 97,500円 |
| 330万円以上 695万円未満 | 20% | 427,500円 |
| 695万円以上 900万円未満 | 23% | 636,000円 |
| 900万円以上 1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円以上 4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
この表の区分は、年収ではなく課税所得です。たとえば、下の前提で年収500万円の人は、課税所得が179万6千円です。全額が5%の区分に入ります。
年収800万円の人は、課税所得が426万5千円です。このうち195万円までに5%、195万円から330万円までに10%、330万円を超える部分に20%がかかります。合計は42万5,500円で、速算表(426万5千円 × 20% − 42万7,500円)で計算した額と同じです。これに復興特別所得税(2.1%)を加え、100円未満を切り捨てた434,400円が、下の表の所得税です。
住民税の計算
住民税は、前年1年間の所得をもとに計算されます。税率は、所得割が10%(道府県民税4%、市町村民税6%)の標準税率です。これに均等割4,000円(標準税率)と、国税の森林環境税1,000円が加わります。
住民税の基礎控除は最高43万円で、所得税より低く設定されています。そのため、課税所得は所得税より高くなります。所得割からは調整控除(最低2,500円)が引かれます。
年収別の手取り
次の前提で計算しました。
- 協会けんぽ東京支部、40歳未満(介護保険料なし)、扶養する家族なし
- 賞与なし(年収を12か月で均等に割る)、一般の事業の雇用保険
- 令和8年度の保険料率(子ども・子育て支援金を含む)を12か月分
- 所得税は令和8年分、住民税は2026年の所得にかかる分(2027年度に納める分)。所得控除は社会保険料控除と基礎控除だけ
- 住民税は標準税率(所得割10%、均等割4,000円、森林環境税1,000円)
| 年収 | 社会保険料 | 所得税 | 住民税 | 手取り | 手取りの割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 457,728円 | 26,600円 | 115,700円 | 約240.0万円 | 80.0% |
| 400万円 | 598,956円 | 57,200円 | 175,600円 | 約316.8万円 | 79.2% |
| 500万円 | 723,144円 | 91,600円 | 243,100円 | 約394.2万円 | 78.8% |
| 600万円 | 881,400円 | 149,300円 | 307,300円 | 約466.2万円 | 77.7% |
| 700万円 | 1,039,656円 | 276,100円 | 375,500円 | 約530.9万円 | 75.8% |
| 800万円 | 1,164,960円 | 434,400円 | 453,000円 | 約594.8万円 | 74.3% |
| 1,000万円 | 1,265,688円 | 822,200円 | 637,900円 | 約727.4万円 | 72.7% |
年収700万円の行で所得税が大きく増えるのは、合計所得金額が489万円を超えて基礎控除が104万円から67万円に下がるためです。年収800万円以上では、厚生年金の標準報酬月額が上限の65万円に達しています。
賞与がある人、40歳以上の人、扶養する家族がいる人、ほかの都道府県の人は、金額が変わります。住民税は自治体によって税率が違う場合もあります。
まとめ
- 社会保険料は標準報酬月額に料率を掛けて決まります。料率は加入先と都道府県で違います。
- 令和8年分の所得税は、基礎控除と給与所得控除が引き上げられ、年末調整で精算されます。
- 税率の区分は年収ではなく課税所得で見ます。
パートなどの社会保険の加入基準と扶養の基準は「社会保険料のしくみと年収の壁」、年末調整で使う控除は「年末調整の控除と申告書の書き方」で説明しています。